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櫻井崇史「絵を見る会」 2025年10月23日-2025年11月24日

櫻井崇史「絵を見る会」

 〜 
開廊時間:
水木17:00 - 19:00
土日祝13:00 - 19:00(最終日含む)

SPACE NOBI では、2025年10月23日から11月24日、櫻井崇史「絵を見る会」を開催します。

櫻井は、3D空間上にスキャンされた粘土を支持体として絵を描いています。櫻井の画面に現れる抽象的な黒い背景、3Dとしてスキャンされた粘土、描画されたイメージという関係は、通常の絵画における描画行為が、支持体を被覆するようにイメージを形成するものであるという関係性を、メタ的に言及しつつ脱臼させています。また、3D空間内での描画行為の明示によって、コンピュータグラフィクスであると同時にアナログな絵画であるという、奇妙なユーモアを生みだしています。

櫻井崇史

櫻井崇史「高橋由一が描いたヒポクラテスの肖像画。 由一は川上冬崖の描いたヒポクラテスを写した。 冬崖は石川大浪の描いたヒポクラテスを写した。 大浪は J.L.ゴットフリートの著作の挿絵を基にヒポクラテスを描いた。」
"高橋由一が描いたヒポクラテスの肖像画。 由一は川上冬崖の描いたヒポクラテスを写した。 冬崖は石川大浪の描いたヒポクラテスを写した。 大浪は J.L.ゴットフリートの著作の挿絵を基にヒポクラテスを描いた。"
2018, 41.0cm × 32.5cm, Inkjet print, acrilyc

1983年生まれ、2010年武蔵野美術大学大学院修了。
近年の主な展覧会に、「絵の展覧会 2」(2024, 自宅)、「墓石・アルバム・まぼろし」(2021, KAYOKOYUKI)、「プローブ」(2019, switch point)、「なめらかさ」(2018〜, オンライン)などがある。

https://takashisakurai.com


「絵を見る会」について

天重誠二

明治初期の洋画は、西洋技術の導入としての側面が強かった。そうした「西洋=技術」としての絵画に反発して、岡倉覚三とフェノロサは近代日本画を構築しようとしたのだが、その第一歩として「鑑画会」のたちあげがあった。鑑画会はその名のとおり「絵を見る会」だが、ここで「絵を見る」とは、現代のわたしたちが展覧会において絵を見るという行為を想像してはいけない。鑑画会の母胎だった龍池会は古物保護のための組織で、そこでは古画の鑑定がおこなわれたが、鑑画会もとくにその当初において「絵を見る」とは古画の鑑定のことだったのである。

北澤憲昭の論じるところによれば、高橋由一は美術館構想を通じて「見ることの近代化」を進めた人物として描かれている。だが、フェノロサと岡倉覚三の登場は、洋画排斥運動を通じて、由一が想像した未来とはまったく別のものを生みだした。鑑画会が成立したこの頃、博物館や美術学校はまだなく、古画が二束三文で売られたり、写真があったり、浮世絵も新興出版文化のなかで再編成されたり、「絵を見る」ための制度はおおきな揺らぎのなかに置かれていた。

櫻井が、「絵を見る」ための装置を、Webに求めたり、住んでいる自宅に求めたり、展覧会場にディスプレイを持ち込んでそこでCGを「絵」として提示することを試みたりするのは、現代のわたしたちもまた、「見る」ことの制度の揺らぎのなかに置かれているためである。「本を読む」ことが、すでに物質としての本を開いて肉眼で読むことにかぎられないように、わたしたちにとって「絵を見る」ことが意味するのは、デジタルの画像やイラストを見たり、画集を見たりすることを含んでいる。展覧会場で「絵を見る」行為は、画家が信じるほどヘゲモニックな制度ではなく、いくつもある「絵を見る」制度の一部をなしているにすぎない。本展もまた、制度としての展覧会という形式を借りつつ、「絵を見る」ことを揺らぎのなかにもたらす試みである。


会期中イベント

トークイベント「制度、絵、デジタル」(ゲスト: gnck)

10月26日(日) 17:00 - 18:30
ゲスト: gnck(美術評論家)
参加費: 一般1000円、学生500円

予約制: オフライン10名様
オンライン配信も予定しています
ご予約方法: (調整中)

gnck(ジーエヌシーケイ)

gnck画像

評論家。美術批評。キャラ・画像・インターネット研究。1988年東京生まれ。 「画像の演算性の美学」を軸に、現代美術、近代絵画、ポピュラーカルチャーまで、幅広く造形文化を研究する。 美術手帖第15回芸術評論募集第一席。論考に「電子のメディウムの時代、デジタル画像の美学」 「ハーフトーンの筆触」「彫刻の周縁、立体造形の肥沃」 「ピクセルアートとピクセル・(イン)パーフェクト 豊井祐太の感性」ほか。

図像観察ワーク「絵をさわる人をさわる--絵の内在的観察」

11月15日(土) 17:00 - 19:00
入場無料、参加自由
明源+櫻井崇史

明源と櫻井崇史による図像観察ワーク「絵をさわる人をさわる--絵の内在的観察」を行ないます。

明源

他の制作者の観察する眼に介在し、制作、作品、観察の線引きを再考する試みを行なっている。明源の関心は、他我が言語や図像を介在し、交流が果たされることへの、懐疑的な眼差しに基づいている。現在は、作品観察時に産出される感覚を、直接制作に再接続し、制作・作品・観察この3者の線引きを再考することを目指し、観察論を記述している。主な展示に「村井のいっぽ」(MAHO KUBOTA GALLERY, 2018)、「iphone mural」(blockhouse, 2016)、「44442回生まれた羽ばたきをめぐる研究。」(Workstation., 2016)、おもな企画に「資料のオーラ観察」(2025)、「もみほぐしポータブル」(辻村優子, 2025)、「殖える」(散策者, 2024)などがある。